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最高裁判所第一小法廷 昭和27年(し)42号 決定 1958年5月26日

主文

本件特別抗告を棄却する。

理由

本件特別抗告申立の理由は別紙のとおりである。

第一審では、被告人が公判期日に出頭しないときは、原則として開廷審理することができないのであるが、(一)五千円以下の罰金又は科料にあたる事件については、全く被告人の出頭を要しないで(刑訴二八四条)、(二)拘留にあたる事件については、判決を宣告する場合のほか、被告人の出頭を要せず(同二八五条一項)、(三)長期三年以下の懲役若しくは禁こ、又は五千円を超える罰金にあたる事件については、刑訴二九一条の手続をする場合及び判決を宣告する場合のほかは、被告人の出頭なしで(同二八五条二項)、公判の開廷審理が許される。故に刑訴規則二一六条は、右のうち(一)の五千円以下の罰金、又は科料にあたる事件については、判決宣告の行われることを知らしめるために、(二)及び(三)の場合は被告人の出頭を確保するために、判決の宣告のみをすべき公判期日の召喚状には、その公判期日に判決を宣告する旨をも記載すべきことを規定したものであり、同規則二二二条は、右(一)の五千円以下の罰金又は科料にあたる事件については、被告人の出廷なしで判決の宣告ができるので、判決宣告のあったことを不出頭の被告人に知らせるために、その旨及び判決主文を被告人に通知すべき旨を規定したものであって、右各刑訴規則はすべての被告事件殊に本件のように三年を超える懲役にあたる事件には適用のない規定である。控訴審は被告人の出頭なくして、公判の開廷審理及び判決宣告をすることができることは、所論のとおりであるが右刑訴規則二一六条二二二条は、第一審に関する規定であるばかりでなく、第一審でも特殊の事件に限り適用される規定であるから、同規則二五〇条の規定にかかわらず控訴審には準用のない規定である。控訴審においては、被告人不出頭のまま開廷審理ならびに判決宣告をすることができるのであるから、判決宣告期日であることを召喚状に附記し、又判決宣告後には、その旨及び判決主文を被告人に通知することは望ましいことではあるが、同規則は裁判所にこれをなすべきことを要求してはいないのである。従って本件控訴裁判所が被告人に対し右手続をとらなかったからといって何ら違法はなく、所論憲法違反の主張は、その前提を欠き不適法のものである。

よって、刑訴四三四条、四二六条に則り裁判官全員一致の意見により、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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